2017年07月

2017年07月25日

農地転用の許可

6.農地転用許可申請手続き

(1)許可申請者

①4条許可申請者

4条許可申請者は、自分の土地を農地転用するのですから当然土地所有者だけとなります。これは名義のことであり、実際に申請する人という意味では、申請者が窓口に来て申請する場合もありますが、大部分が不動産屋や行政書士などの代理人です。委任状があれば何の問題もありません。

②5条許可申請者

5条許可申請者は、原則として譲渡人と譲受人の連署によります。しかし、以下の場合は譲受人が単独で申請できます。これは名義のことであり、実際に申請する人という意味では、譲受人が窓口に来て申請する場合もありますが、大部分が不動産屋や行政書士などの代理人です。これも委任状があれば何の問題もありません。 

・競売・公売の場合(農地法施行規則第10条第1項第1号)。
・判決・審判の確定、調停が成立した場合(農地法施行規則第10条第1項第2号)。

(2)添付書類(農地法施行規則第22条第1項)

4条・5条許可申請書に添付する書類は、以下のように法定添付書類と法定添付書類の項目の最後に書かれた「その他参考となるべき書類」があります。4条と5条の場合は、その転用目的によって添付書類が大きく変わってきますので、まずは申請農地がある市町村農業委員会に出向いて「○○目的(例えば駐車場目的)の4条(または5条)の添付書類一覧をください」と言うと、もらえますのでもらって確認しましょう。 

①法定添付書類

・法人が権利を取得する場合は、その法人の登記事項証明書及び定款または寄付行為の写し
法人の登記事項証明書は、管轄の法務局に行って申請すると交付されます。定款はその会社が持っていると思います。

土地の登記簿謄本
日本全国どこの管轄の法務局に行っても申請すると交付されます。

土地の位置を示す地図(位置図)
都市計画図や農業振興地域区域図などが多いです。縮尺は10,000分の1~50,000分の1が一般的です。申請地の市役所の都市計画課や農政課で数百円で売っています。この図に「申請地」と落とせばいいのです。

建物や施設などの図面
平面図や建物の場合立面図などです。

資力及び信用があることを証する書面
資力を証するものといえば、銀行の残高証明書や融資証明書があります。信用を証するものはたぶんないと思います。先述した通り、農業委員会が違反を調べたものがこれにあたると思います。ですから添付書類ではありません。

転用する行為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があったことを証する書面
よくあるケースが農協や銀行や財務省などです。農協や銀行から借金をして、抵当権が設定されたと思いますので、転用して売却してその売却代金が銀行への返済にあてられれば、同意書を作ってもらえると思います。
財務省は相続税猶予をした場合に抵当権が設定されます。財務省(税務署)は同意書を発行しませんので、許可申請提出先の都道府県の取り決めがあると思います。一般的には、税務署の担当者に伺いをしてOKが出れば、その人の所属・役職名・氏名・連絡先と、いつ同意したかを書いた書面があれば大丈夫という都道府県が多いと思います。○○税務署や都道府県、市町村の差押が付いていることもあります。これはそれぞれの税金を滞納したために差押られたものです。これは抵当権よりも権限が強く、差押権者が独自に公売を実施することができます。これらの場合も先ほどと同様に、税務署以外は専用の書式があると思います。

土地改良区意見書
これはわかりやすく言うと、土地改良区との手切れ金を納付したら発行される証明書みたいなものです。土地改良区にとっては水利費を毎年徴収できなくなる替わりに、決済金という名目で一度に決済金が土地改良区に納付されれば「農地転用はやむをえない」という趣旨の意見書が発行されるものです。

特に、地目が田の場合は必ずといっていいほど必要になります。畑の場合でも意見書が必要な土地改良区があります。どの土地改良区で意見書を発行してくれるかは農業委員会に地番を言うと教えてくれます。一つの農地に二つ三つの土地改良区の意見書が必要ということも多々あります。

しかも、その値段は結構高めです。例えば1㎡あたり100円くらいから、高いところでは500円という土地改良区もあります。仮に1㎡あたり200円だとすると、一反(約1,000㎡)あたり20万円になります。

・その他参考となるべき書類(次項②参照)

②その他参考となるべき書類

上記は法定添付書類であり、実際には最後の「その他参考となるべき書類」がたくさんあるのが現状ですが、市町村によってバラバラのため多いと思われるものを以下にあげます。

公図
管轄の法務局に行って申請すると交付されます。市町村の役所の資産税課で交付する市町村もあるようです。

委任状
これは窓口に来る人が申請人でない場合は当然必要になります。書式は所定の用紙がある市町村も多くあります。なければ自分独自に作っても問題ありません。要は、誰が誰に何を委任したかが明記されていれば問題ありません。

案内図
住宅地図のコピーで大丈夫です。位置図と同じように示せば大丈夫です。

住民票
申請人が個人の場合で譲受人のみ、市町村によっては譲渡人も必要であったり、両方必要なかったりします。

売買または貸借契約書の写し
譲渡人と譲受人が取り交わした契約書の写しです。これを添付資料とする市町村はあんまりないと思います。

平面図や立面図
転用後の図面で、立面図は住宅等の建物の場合のみ。立面図以外は、設計事務所が作った図面ほどの精度は必要ない市町村が多いと思いますが、市町村に確認してみてください。

縦断面図
田畑転換などの時の一時転用の時に添付することがあります。平面図を書いてその中のA地点からB地点まで線を引いて、その断面を横から見た図が縦断面図です。

車検証の写し
駐車場として転用する場合に必要です。市町村によっては必要ないところもあります。

戸籍謄本
分家申請のときなどに添付します。調整区域に住む者との親族関係をみます。

駐車場設置にかかる資料
農業委員会所定書式があるところと、駐車場の概要を書いてあれば任意書式のところもあります。またこれ自体、添付書類ではない市町村もあります。

資材置場設置にかかる資料
農業委員会所定書式があるところと、資材置場の概要を書いてあれば任意書式のところもあります。またこれ自体、添付書類ではない市町村もあります。

水路占用許可証写し
農地転用するときに水路をまたぐ場合に必要です。市町村土木課や農政課などで申請して許可されます。

現況写真
すべての転用申請に添付する市町村と、ある転用申請に限って添付する場合、まったく必要ない市町村などさまざまです。

資金計画書
申請書の欄に書く都道府県もあれば農業委員会所定書式か任意の書式を別途添付する場合があります。要はどの工事にいくらかかるか、そのお金はどこから調達するかが書いてあれば大丈夫です。

資金証明書
銀行の残高証明書または融資証明書です。融資証明は銀行のものだけではなく、親戚や知人から借りる旨の書面とその方の残高証明書というケースもありました。

理由書
書式は任意です。なぜ農地転用が必要になったかを細かく書くものです。これが重要ですので手抜きをしないでしっかり書きましょう。

開発事前協議書
建築物の農地転用の場合、開発担当課と事前協議を済ませて開発許可の見込みがあるかを確認するものです。

除外証明書
農用地区域内ではないことを証明するものです。市町村農政課で発行してくれます。

見積書
当然ですが開発する業者が発行した見積書です。

市町村盛土条例等の許可証
ある面積以上盛土をする場合に、農地転用申請前に申請して許可を受けます。それの許可書の写しです。市町村環境課などに申請して許可されます。条例がない市町村も多くあります。

(3)受付から許可までの流れ

①受付

市町村農業委員会で受付期間を設定しています。多くは2種類に分類できます。一つ目は、毎月15日までなど受付締切日を設定する場合。二つ目は、毎月5日から10日までとか、その期間だけ受付する場合があります。

どちらにしても、その期間までに申請されれば、同じ月の農業委員会総会に議案としてかけられます。農業委員会総会は毎月行われていて、25日などの下旬に開催される市町村が多いと思います。

受付時には添付書類が整っているか、申請書に記入もれがないかを簡単に確認します。

②審査

受付が済んだら、農業委員会事務局により申請書や添付書類の内容を確認します。その後、事前審査会や現地確認までに書類の補正や追加書類を求められます。(事前審査会を行わないで、事務局だけの事前審査で総会にかける市町村もあります。)その後、地元農業委員による審査会や現地確認が行われます。

次に、25日ごろに行われる農業委員会総会において議案として審議されます。市町村によって審議方法はマチマチだと思います。だいたいは申請内容を地元農業委員か事務局が発表し、添付書類の不備の有無、農地法違反の有無、周辺農地や水路への影響、開発などの他の許認可がされる見込みの有無、などが総会で審議されます。どれにもあてはまらなければ、採決をとり承認され許可相当という意見が決定されます。

農業委員会総会終了後、追加書類などや書類の補正があった場合は、それらが求められることがあります。その後、だいたい月末までに農業委員会総会での意見を附して、都道府県(実際は農林事務所や農林振興センターなどの出先機関)に進達されます。

都道府県担当者は書類チェックをして、疑問点などを市町村農業委員会に質問し、都道府県の地方審査会などにかけられます。月の半ばから月末ごろには、都道府県全体からあがった申請を都道府県農業会議の審査会にかけ、都道府県内全案件を審査し、許可または不許可の判断をくだします。

都道府県農業会議の審査会では、市町村農業委員会で許可相当となったものに関しては、なるべく許可の方向で簡単に審査されます。なにせ都道府県内のすべての審査をするわけですから、すべて慎重に審査はしていられません。不許可相当で進達されたものでも、申請内容をよく審査し市町村農業委員会の判断が厳しすぎると判断すれば許可になります。

また、不許可要件があったとしても不許可要件が是正される見込みがあれば、是正されるまで保留する場合もあり、明らかな不許可要件がある場合以外は不許可にはなりません。もちろん都道府県によって審査が厳しいところもありますが、だいたいは「転用やむなし」のところが多いと思われます。

この都道府県農業会議の審査会の意見決定によって、最終的には都道府県知事名で許可書が発行されます。

③許可書または不許可通知の発行

都道府県の審査が終了したら、月末ころに市町村に許可書または不許可通知が発行されます。それが届いたら市町村農業委員会は申請者に連絡して許可書または不許可通知が渡されます。

 許可書や不許可通知には、処分に不服の場合は必ず審査請求ができる旨の教示が書かれています。処分に不服の場合は、行政不服審査法第6条の規定にのっとり、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、処分をした都道府県知事に異議申立書を提出して異議申立てをすることができます。

④受付から許可書受領までの期間

流れをまとめると、農業委員会で受付されてから、同月の25日ごろ市町村農業委員会で審議され、月末までに都道府県に進達され、都道府県の審査会に諮られるのが翌月中旬から末頃になります。その後、その月の末から翌々月初めまでには許可書が発行されます。ですから、早い都道府県では受付から許可書発行までは一ヶ月半、遅い都道府県でも2ヶ月半くらいには許可書が発行されます。



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